先日以下のの記事で、現在の機械翻訳には質の問題があり、そのまま使ってはいけないことを紹介しました。
今回の記事では、逆に機械翻訳をそのまま使ったことで起きたとんでもない誤訳についてご紹介したいと思います。主に私がカメラに納めたものですが、一部ネット由来のものもあります。そういうものに関しては「引用」として、関連記事(この記事ではツイートですが)を埋め込む形で掲載します。
誤字が含まれていたり、文法がちょっと変だったりするといった、細かいところは違うけれど、伝えようとしていることが理解できるものに関しては取り上げず、本当にわけのわからないレベルの誤訳のみをピックアップしました。また、できるだけ面白いものを選びました。(とはいえすべて面白いとも保証できませんが…)
中国人の私が解説する関係上、すべて日本語⇔中国語間の誤訳です。
萌は断れない?

まずはこちら。ゴミ箱に貼り付けてある「もえないゴミ」の紙ですが、その中国語翻訳が「萌は断れない」という意味になっています。
萌 无法 拒绝もえ できない ことわる
「燃える」の「もえ」がサブカルチャーの「萌」として翻訳されているようです。「萌」は中華圏でも一時期大流行していましたし、たしかにそちらの「もえ」は断りにくいですが…
「もえない」の「ない」はできないの意味に翻訳されていますがいちおう否定形になっています。これもわかります。
しかしわかるのはここまでです。なぜなら原文にある「ゴミ」がまるごと抜けてなくなっていますし、訳文に現れた「ことわる」の部分がどこから来たものかはわかりません。
この事例はとにかく、訳文が明後日の方向に行っちゃっていて、元の意味からずれまくっていますが、意外にかなり可愛い表現になっています。
かなりシュールなので、これを先鋒とします。
脚の水上公園、あなたは使用できないでしょう!

見ての通りの日本語文ですが、「足水場」が「脚の水上公園」という意味に翻訳されています。どうしてこうなった、と思いますね。
後半の6文字「你将无法使用」は、「あなたは使用できないでしょう」と推量形になっています。これは前半が正しければ、なんとなく「使えないんだ」とわかるレベルです。
「足水場」をいろんな翻訳エンジンに投入して検証しましたが、適切な翻訳が返ってくることはありませんでした。以下にリストアップします。
- 饮水站(水を飲む場所)
- 水坑(池)
- 水塘(池)
- 水源(水源)
- 足水场(日本語のママ)
たぶん、「足水場」はややマイナーな用語だから、どの翻訳エンジンにも適切な翻訳が蓄積されていないからではないかと思います。
ちなみに足水場を中国語では「泡脚池」(足を浸かる池)と言います。
これを次鋒とします。
注釈文入口

入口の下の「注釈文入口」は中国語のつもりでしょうか。「釈」の文字は日本語の漢字ですし、ちょっと疑わしいですが、それ以外の解釈ができないですよね。
おそらく「注文口」を機械翻訳にかけたのでしょう。しかし機械翻訳でターゲット言語を中国語(簡体字・繁体字どちらでも)に設定していれば、「釈」の文字が出力されることは決してないはずですから、不思議なりません。
それともソース言語もターゲット言語も日本語に設定したからでしょうか。でも普通機械翻訳ではソース言語とターゲット言語を同じに設定することはできないはずです。
謎だらけのこちらの例を、五将とします。
中国を感染に来るな
コロナウイルスに対する恐怖心を抑えきれなかったが故に中国人排斥の張り紙をして逮捕されたあの方の貼り紙の内容です。
報道によると、「中国人にウイルスを拡散に来ないでほしい」という意図らしいですが、翻訳された文章は「中国を感染に来るな」と、ほぼ真逆の意味になっています。
不要来 感染 中國来るな 感染 中国
確かに、「不要来」は「来るな」の意味ですが、「感染」と「中國」をくっつけると、「感染」が動詞となり、「中国を感染」という意味になってしまいます。
ビラ1つでも、人力翻訳のほうが安心ですね。
間逆な意味に翻訳してしまったこちらの例を、中堅とします。
地下に通じる道(地上に出れると言ってない)

「地下連絡通路」は「地下に通じる道」という意味に翻訳されています。一見してさほど問題がないように見えますが、実際は中国語ネイティブの人読んだ場合、地下室とかへの出入口のイメージしかなく、向こうにも出入口があってそこから出られるという連絡通路のイメージがまったくありません。
そういうことなので、むしろなんだか怖そうなイメージを抱いてしまいます。ダンジョンを冒険するゲームが大好きな私はワクワクしますが。
ということでこちらを三将とします。
部屋関心?

これは某ドラッグストアのハウスケア売り場の天井に懸垂されているサインです。中国語を表記していますが、「ハウスケア」の意味になっていません。
房子 关心お部屋 関心
直訳すると「お部屋関心」になりますが、日本語でも「お部屋関心」が意味をなさないのと同じように、中国語でもこれは意味を成しません。これを見てハウスケア製品だと理解できる中国人は皆無ではないかと思います。ようは、指示サインの役割を果たせていないということになります。
多分、これは英語の「I don’t care」(どうでもいい、関心がない)のcare(配慮、気配り)を中国語に翻訳した結果なんじゃないかな、と思います。
つまり日本語をいったん英語に戻して、英語で翻訳した結果を中国語に返しているということですが、あくまで推測です。
こちらは副将とします。
と、ここまで紹介して、残り大将のみですが、大将はややあっち系(エロ)なので、気分を害することが予想される方は次を読まれないでください。
それでは行きます。
顔射うどん
シモネタですみません。そしてこれはあまりにも有名で一時ツイッター界隈のみならず、ネットを賑わわせていたのでもしかして知っておられる方も多いのかもしれませんが、強烈で典型としての意味もありますので、ご紹介することにいたします。
「ぶっかけうどん・そば」の「ぶっかけ」は、AVのぶっかけとして翻訳されてしまっています。エロが食文化より早く伝播する何よりの証拠かもしれません。
英語でも同じことを指して「bukkake」と言いますので、たぶんこれも日本語をいったん英語に直した上で中国語に翻訳したのではないか、と思います。
こちらが大将です。大将の名に恥じぬ存在感があると思います。(それとも捨て大将か?)
最後まで読んでいただいてありがとうございます。機械翻訳によるしくじり例を7つご紹介しましたが、これらの機械翻訳を入手した、または掲示した方々をばかにするという目的でこの記事を作成したわけでは決してないことをご理解ください。
そもそも翻訳は、一般の人にない「外国語の知識」が求められます。近年こそ利用する場面が多くなってきましたが、まだまだ一般の認知度が低く、うまく利用する方法が浸透していないので、機械翻訳が出した回答を検証する方法を普通、我々は知っていません。
こういう私でも、日本語から例えばタイ語への機械翻訳の結果を検証できるかというともちろんできません。
安心のために、やはり少量でも人力翻訳を利用すべきだと思います。
人力翻訳は高い、遅いイメージがありますが、コストを抑えたハイスピード人力翻訳もあります。別記事にまとめていますので、興味がありましたらぜひお読みください。(準備中)